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農業と動物福祉の研究会(JFAWI)

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東京都武蔵野市境南町1−7−1
日本獣医畜産大学
食料自然管理経済学教室

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2006年3月

OIE世界家畜福祉ガイドラインに対応する

EU畜産物フードシステム開発の実態調査

要旨



1.調査機関名及び調査実施者

調査機関 :日本獣医畜産大学応用生命科学部・動物科学科・
        食料自然管理経済学教室

調査実施者:松木洋一(日本獣医畜産大学応用生命科学部 教授)

        佐藤衆介(東北大学大学院農学研究科 教授)

        永松美希(日本獣医畜産大学応用生命科学部 助教授)


2.調査の目的

2005年5月のOIE総会で決定された世界家畜福祉ガイドラインは、「輸送(陸上・海上)」「人道的と殺」「防疫目的の殺処分」の分野においてなされ、ついで8月から2010年までの期間で「飼育舎」「飼育管理」における家畜福祉基準が検討されるが、今後世界の畜産発展に大きな影響を及ぼすことになろう。本調査は、OIEの新たなガイドライン作成の動向とそれを先導するEUの最近の家畜福祉政策を調査分析し、とくに政策にたいする市民側の意向を反映させているEUの家畜福祉NGOの現状と農業者や畜産関連企業がその経営環境の変化に対応してどのように家畜の健康・福祉に配慮したアグリフードチェーンを開発しつつあるかの実態調査を行った。また、大学や民間研究機関が行っている実践的な家畜福祉研究の動向を調査した。


3.主な調査対象の概要


1)OIE本部における家畜福祉ガイドライン策定の新たな動き

  2005年9月7日〜9日までイタリア、テラモのOIE動物福祉協働センターにおいてOIE動物福祉作業部会の第4回会議が行われ、以下のような議題が検討され決定された。

(1)2,005年5月に採決された基準の改訂を次のように検討し2006年6月総会に提出する。

?胎児の扱いについて;現状は専門家の間で意見が異なっており研究が続けられたままである。

?炭酸ガス混入ガスの使用について;現状はその方法によって嫌悪反応の存在の報告があるため、専門家の意見に従い条項3.7.6.12は研究対象として据え置かれている。作業部会はOIEに対し、特別検討部会を設置しこの重要分野における特別なガイドラインの作成とモデル例の提出を求めるべきと助言した。

(2)水棲動物福祉Aquatic animal welfareについてのガイドライン原案の作成と2006年総会への提案

2005年6月に設置された水棲動物福祉特別検討部会の会長が作業部会に対して最近の活動について報告をした。

その特別検討部会は食用魚類の陸上および海上輸送、殺処分および食用のための屠殺に関するガイドライン条項を作成するために、OIEの陸棲動物福祉ガイドラインの最近の条項を使用した。彼は動物福祉ガイドラインの原則は水棲動物問題をより良く扱うために改訂した方がよいと助言した。この提案条項は天然魚類と養殖魚類の両方に当てはまる。

この専門家による仕事内容はOIE水棲動物健康規格委員会の2005年8月会議報告に取り入れられており、その提案された規格条項を議論するために委員会からOIE加盟国に2006年3月に通知される予定である。その規格条項は2007年に採決されることが期待されるものである。この水棲動物福祉ガイドラインの原則は最近の改訂される陸棲動物福祉ガイドラインと連動されて改訂されることを作業部会は賛同した。


2)EU委員会の新しい家畜健康福祉政策

EU委員会は、2006年1月23日に「EU動物福祉5カ年行動計画2006年−2010年」を公表した。この行動計画は、以下の5分野の行動計画から構成されている。

(1)動物福祉の最低基準の引き上げ

(2)動物福祉分野における研究および動物試験における「3つのR」の原則(replacement(代用)、reduction(減少)、refinement(改良))の促進

(3)動物福祉に関する品質表示・規格化の導入

(4)家畜飼養者や一般市民への動物福祉に関する情報提供と共通認識の促進

(5)EUは動物福祉分野における国際的なイニシアティブを保持

EUは、この動物福祉をいっそう徹底するために、2007年1月より、共通農業政策(CAP)における直接支払いの受給のための重畳的遵守事項(クロス・コンプライアンス)に、家畜福祉基準も追加することとしている。また、家畜福祉ブランドを規格表示する制度の創設によって、消費者にアニマルウェルフェア食品についての情報を提供する計画である。


3)動物保護福祉NGOの家畜福祉政策への取り組み

(1)世界動物保護協会WSPAの家畜福祉への取り組み

WSPAは世界最大の動物保護団体であり、130カ国に600メンバー組織をもっており、13支部を運営している。アニマルウェルフェア事業は、コンパニオンアニマル、野生動物、家畜の保護や災害からの動物救助を主として行っている。家畜福祉についての事業計画は、工場的農業に反対し、家畜福祉の改善を推進するための「世界農場ウオッチWorld Farmwatch」事業を開始している。このWorld Farmwatch事業は家畜にかかる苦痛を防止することに目的があり、その方法は以下のようである。

・FAIと協働して営利的に逞しくかつ工場的農業に取って代わる人道的農業システムを世界レベルで振興すること
・FAOやWHOのような国際機関を説得させて家畜の福祉への関心を高めること
・国内の法令を確立するねらいのいろいろなキャンペーンを手助けして、ケージやクレートをつかう飼育方法を禁止させ、また家畜の遠距離輸送を防止すること
・多国籍食品企業を説得させてかれらの製品に高い家畜福祉基準を受け入れさせること
・家畜福祉と持続可能な農業との相互依存関係の認識を促進させること。集約的農業は人間と環境にたいする甚大な影響を及ぼしているが同様に家畜福祉にも大きな影響があることを認識させること。

以上のようなNGO活動を通してOIEとEUの家畜福祉政策に修正や提案などを行う強いロビー活動力を持っている。

(2)ヨーロッパ動物福祉協会Eurogroup for Animal WelfareEAWの家畜福祉への取り組み

EAWはEUの中で主導的な動物福祉NGOであり、1999年からEU委員会の共通農業政策審議会、農産物審議会、健康と安全審議会、畜産物審議会、動物福祉審議会の委員に代表を送り、家畜福祉政策の策定や関連法律の立法に際し対案を提示するなど市民からの要求を反映させている。また、EU議会の中に他の多くのNGOを組織化した動物福祉保護に関する常設意見交換会をコーディネートしているなど、EU当局と密接なロビー機関である。2005年4月にはブロイラー生産における家畜福祉基準についての提案を行っている。


4)EUの農業者の家畜福祉政策への反応

(1)ヨーロッパ職業農業者委員会及びEU農業協同組合連合会COPA/COGECA

1996年1月にCOPA/COGECAは「ヨーロッパ農業者と家畜福祉」を発表した。農業者は市民と市場が要求する家畜福祉の合理的な基準に対応しつつ、十分な品質のよい安全な農産物と食品の供給をめざしており、また農業者は家畜を不必要な痛みや恐怖から防ぎ、健康を促進する環境条件で家畜を飼育していると自己評価している。問題の一つは現在のEU共通の家畜福祉規則が加盟国によって実現されている水準が異なっており、歪んだ競争が行われているので、まずはこれ以上の過度の厳しい規則を追加するのではなく、現行規則を平等に守らせることが必要であると主張している。またEU委員会の家畜福祉担当部局は市民の立場からヨーロッパ農業を不信の眼で見たり、農業者を不法者扱いにしがちである。これに対して客観的な専門家を含め、病理学的側面、動物行動学的側面についての科学的検討が不可欠であり、EUの農産物市場を担当する部局と家畜福祉担当部局との協同した検討が求められる。また、EUの政策は農業者の自主的な行動を支援するためにGAP(適切な農業行動規範)や家畜福祉改善勧告などの条項を確立することで、農業者への助成を強めることが必要と主張している。

(2)Prestor企業養豚協同組合のEU家畜福祉政策への対応

Prestorはフランスのブリタニ−地域ブレストにある企業養豚協同組合によるインテグレーション組織であり、出荷額はフランス養豚業界の第4位と大規模な団体である。その協同組合のROUE組合長がEU農業協同組合連合会会長兼ヨーロッパ職業農業者委員会の委員長であるため、EUの家畜福祉政策についての農業者の立場からの意見と家畜福祉への改善活動の現状を調査した。組合員は354人、年間出荷頭数1,297,000頭、子豚45,000頭、繁殖母豚61,000頭、労働者60人、販売額は22,400百万円である。事業は養豚業者への経営・技術コンサルタントと繁殖・肥育素豚の販売、各組合傘下の農場の職員研修、肥育豚の販売、人工授精サービス、畜舎の改善建設、などである。1996年に畜産環境管理を強化するためにISO9002をフランス養豚業界で初めて取得するとともに、4名の獣医師による衛生管理および家畜福祉についての指導を行っている。

(3)オーストリア有機畜産経営と家畜福祉直接支払

ラックス農場Rax Bauerは、ウイーンから2時間ほどにあるラックス山麓の標高700メートルに立地し、1993年に開始した山岳有機畜産経営である。オーストリアの有機農業団体加入者の90%が加入している有機団体「いのちの糧(エルンテ)」(Ernte f?r das Leben)の基準に沿って有機子牛肉(kg当たり980円)、七面鳥肉(同840円)、ウサギ肉(同1022円)、放牧鶏卵(同31円)を生産直売している。また、放牧地にはリンゴ、プラム、ブルーベリーなど有機果実を栽培し、ジャムやジュース、蜂蜜を加工販売している。条件不利地域直接支払金と放牧・有機農業の実践に対して支払われる環境および家畜福祉直接支払金を受けており、それが総所得の6割を占めている。

5)ヨーロッパ消費者の家畜福祉意識

EU委員会は加盟国25カ国の消費者24,708人を対象とする世論調査「家畜福祉についての消費者意識」(2005年2月〜3月)を実施し6月に138ページに及ぶ報告書を発表した。その内容は、第一部は「家畜の福祉」について、第二部には「購買行動と家畜福祉」について、第三部は「家畜福祉のヨーロッパ水準」について構成されている。

調査によると、55%の消費者がEUは家畜福祉を十分実現していないという意見をもち、80%のヨーロッパ消費者は動物の権利はコストに関わりなく支持すべきであると思っていること(ギリシャ91%)、55%の消費者が政府はより強力に家畜福祉政策を行うべきと思っていること(ギリシャ73%)、購入時に49%の消費者が家畜福祉について考えていること、特に58%の人が鶏卵や鶏肉を生産する鶏の福祉の現状が悪いと評価しており(オランダ・デンマーク77%)、59%の人が鶏に優しい生産システムで生産された卵には割り増金を支払う意思があること、38%がケージ飼いでない卵を買っていること、が示されている。

ヨーロッパの消費者は政府が家畜福祉政策によって家畜の健康と福祉が守られることを望んでいるが、現在それが十分ではないので市場における購買行動で実現する努力をしている。しかし、市場も消費者が望んでいる家畜福祉食品を十分供給できておらず、51%の消費者は家畜福祉品質の高い食品を見つけることが難しいとしている。家畜に優しい環境で生産された卵には25%以上高い割り増し金額で買ってもいいという消費者のうち82%は少なくとも一度は農場に出かけ直接購入している。小売店の棚から家畜福祉のラベルのついた食品を購入している消費者の85%は自分たちの購入行動が家畜福祉の改善に寄与していると思っている。


6)家畜福祉アグリフードシステムの開発

(1)スーパーマーケットの家畜福祉食品のマーケティング戦略

英国のNGOのCIWF(Compassion in World Farming Trust)が2003年〜2004年においてスーパーマーケットの調査を行い報告書「スーパーマーケットと家畜福祉−基準の向上にむけて−」によると、スーパーマーケットは肉類、牛乳、卵の生産に家畜福祉基準を導入しつつあり、そのことが家畜福祉の進展に非常に大きな影響を与えていると評価している。CIWFは2001年にも10社のスーパーマーケットの調査をしたが、今回はSainsburyとIceland Foodsが参加せず、ASDA,The Co-operative,Marks&Spencer(M&S),safeway,Somerfield,Tesco,Waitrose and Wm Morrison’s Stores (Morrison)の8社を対象にした調査である。2003年調査報告書「家畜福祉基準の向上にむけて」は放し飼い鶏卵へのニーズが強まるなど好ましい傾向を明らかにし、また英国のスーパーマーケットがいっそうの進歩を求められていることが述べられている。また、大変集約的な方法で飼育されている畜舎内養豚や鶏肉生産のための鶏、養殖魚の福祉を向上させることが緊急に求められていることが調査で明らかになった。

(2)Freedom Food ラベル

フリーダムフードとは、イギリスで最も古い動物保護団体RSPCAによって、家畜のアニマルウェルフェアの改善のために消費者に理解されやすい食品ラベルとして1994年に開発されたものである。基本的には「5つの自由」を実現するためのラベルである。その目的は?イギリスにおける農業動物の飼育改善?高いアニマルウェルフェアが達成されているかどうかを示す理解しやすい表示を提示し、そのための信頼に足る保証スキームを農業者に対して提供するためである。農場保証システムは、農業生産物や食品の安全性、トレーサビリティ、アニマルウェルフェア、そして環境保護のすべてを網羅する基準による定期的な独立した農場検査によって証明する自主的なシステムである。RSCPA基準によるフリーダムフードは、6ヶ月ごとに学術研究者、獣医、検査専門家、企業者によるワーキンググループが豚、鮭、羊、乳牛、肉用牛、七面鳥、鴨、採卵鶏、肉用鶏について動物ごとの基準によって審査している。現在3千800万の動物等がこのスキーム下にあり、1994年以来の合計では2億頭以上が福祉基準の恩恵を受けている。会員は2300人団体である。

(3)英国FAIによる家畜福祉アグリフードチェーンの研究開発ビジネス

Food Animal Initiative(家畜福祉開発農場)は、1998年に家畜福祉論、法律学、倫理学の研究分野やテスコ、マクドナルドなどの食品企業に関係する農業者、農学者、獣医師によって設立され、2001年9月からはオックスフォード大学Wytham農場の425ヘクタールを借りて、家畜福祉研究開発R&D事業を開始している。そのうちの100ヘクタールは有機転換中の飼料作物を栽培し、その他の土地は放牧地として使われるとともに英国の環境保全特別地域と農村景観管理特別地域に指定され生物多様性と農村景観の保全が行われている。飼育家畜は、放牧肉鶏1万羽、放牧採卵鶏4200羽、雌緬羊1000頭、搾乳牛120頭、七面鳥2000羽であり、肥育乳牛と養豚用の家畜福祉基準にあった畜舎の開発を行っている。この農場の事業目的は、持続的農業の推進であり、その内容として家畜福祉と食の安全、生物多様性・農村景観の保全の実現を結びつけている。そのために研究開発とビジネスを直結させており、家畜福祉について食品企業へのコンサルや農業者、消費者、研究者、児童生徒に対する情報提供及び研修の場をつくっている。企業向け研修のテーマには、アグリフードチェーン開発、家畜福祉、食品の安全、食品生産の倫理である。また、国際的なR&D活動も行っている。


7)家畜福祉研究の動向

(1)第3回家畜福祉総合評価法国際ワークショップ

国際ワークショップの参加者は、EU加盟国、スイス、NZ、USA、カナダ、ウルグアイ、パキスタン、日本からの193名であった。ワークショップでは、EUが開始している2004年5月から5年間の“福祉品質Welfare Quality:WQ”プロジェクトの成果の一部の報告と討論がなされた。

(2)ウイーン獣医科大学・動物福祉事務所その他

ウィーン獣医科大学家畜管理・家畜福祉研究所を訪問し、動物福祉の基本法ならびに養鶏に関する特別条項を調査した。この研究所は4人のスタッフからなり、これまでオーストリアの動物福祉研究をブタ、ウシ、ニワトリと分担して一手に引き受けてきている。ウィーン市及び獣医局の助成と管理下にあるオンブズマン組織の動物福祉事務所は市民への教育・情報提供も行っており、設立8ヶ月ですでに3,000件の問い合わせを受けている。もっともウィーンは10万頭のイヌ、20万頭のネコがおり、家畜の数は極めて少なく、問い合わせ内容はほとんどがペット関連である。


4.調査結果の要約

OIEは家畜福祉ガイドラインの本丸である「畜舎の福祉基準」と「飼育方法の福祉基準」については時間をかけて加盟国の承諾を得ていく戦略である。その前に日本に最も影響が及ぶと思われる水棲動物たる魚の福祉ガイドラインの原案が作成され2006年5月の総会に提案され、2007年には採決に持ち込みたいという行動計画である。昨年採決された陸棲動物のガイドラインではいくつかの残された懸案があり、改訂案が提出されることになっている。EU主導型の色彩をなるべく出さないで進めていきたいとのOIE当局の姿勢であるが、EUの戦略が色濃く反映していることは事実であり、世界の畜産業と消費者の現状からすると今後多方面からの分析と論議が必要であろう。

そのEUは2006年1月に「EU動物福祉5カ年行動計画2006年−2010年」を開始し、いっそうの家畜福祉活動を促進している。とくに政策も共通農業政策CAPの直接支払い制度の中に家畜福祉直接支払を導入することになり、そのための評価法の研究開発事業が2004年から準備されてきている。このような家畜福祉政策はヨーロッパ市民の長年の活動によって造られてきたのであり、政治行政と市民が一体となって強化されている。EUが拡大したことも理由となって加盟国間の家畜福祉に対する意識と取り組みに大きな相違が存在しており、また農業者と消費者市民とのコンセンサスが十分とれているとはいえないのが現状である。
とくにWTO農産物自由化ルールがいっそう強化される中で、EUの農業者は競争力の弱体化に直面しており、農業経営の破綻とそれによる農村の疲弊が指摘されつつある。財政負担の限界もあって、家畜福祉直接支払制度の将来の限界がすでに問題となっており、今後の家畜福祉は市場経済の力によって推進していくことが中心的な方向となっている。

そのため、NGO団体もスーパーマーケットや食品企業、農業者、消費者団体との協働システムの構築に取り組みつつある。EU消費者は政策の限界を理解して、実現の主人公は消費者自身であることを自認している。

このような市場経済の中で家畜福祉食品の供給力を増進させていくためには、「農場から食卓まで」のアグリフードチェーンの開発とチェーン間の競争が不可欠で、それが家畜福祉レベルを向上させていくという認識がEUで強まっている。

この家畜福祉を政策的にも市場経済的にも市民社会が受け入れるためには、科学的で客観的な評価指標が求められる。すなわちEUの消費者が食品の品質を安全と味などによってのみ評価するのではなく、家畜飼育の福祉状態によっても判断していることから、EU委員会は「家畜福祉品質Welfare Quality」についての研究助成事業を2004年5月から5カ年間計画で開始した。13カ国39の大学及び研究所の研究者が参加して、実践的な家畜福祉改善をすすめるために、農場での家畜福祉評価基準の開発、信頼のおける監視と情報開示基準の開発、適切な研究者による学際的な研究の推進を目指している。また、民間企業も独自に家畜福祉食品チェーンの研究開発を開始しており、例えば多国籍企業のマクドナルドと英国のスーパーマーケットテスコがFAIという自前の開発研究農場を設立し、オックスフォード大学などの研究者やWSPAなどの動物保護団体が参画して新たな農業技術革命とビジネスの起業化を目指している。

今後アメリカなど農産物輸出国がWTO体制を強化するなかで、この家畜福祉食品という新たな価値観に基づく経済活動をどう評価していくかが21世紀の世界経済及び畜産業にとって避けることの出来ない課題となろう。

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