
<日本語版への序文>
消費者の健康と福祉は、世界で主要な関心事となっている。食品安全はこの関心の中でも最も重要なものである。最近10年間で、新種の病原菌出現、フードシステムの変化、農産物取引の増加で、食品安全問題への注目がいっそう増すことになった。EU食品安全法(2002年施行)をはじめとする、新たな食品安全規制が多くの国で始まった。食品業界には、食品安全の認証をとり、消費者に安心をいだかせるためにいっそうの努力が求められている。
しかし、食のコミュニティにおいては、その各段階、つまり消費者段階、農場および加工ビジネス段階、サプライチェーン全体において国内においても国際的にも、食品安全が重要なテーマとなっている。
食品安全経済学は新しい研究分野であり、食品安全の実践をめぐる意思決定プロセスを支えるための概念、手順、データの確実なフレームワークが求められてくる。1990年代の終わりから、世界の様々な場で新たな経済学研究が動き出し、食品の安全性改善に向けたコスト、ベネフィット、トレードオフの研究が進められている。
食品の安全性改善をめぐる政策と戦略を生み出すために経済学がどこまでそのように貢献できるかを知るために、ワーヘニンゲン大学(オランダ)では2002年4月、この分野初の国際ワークショップを41名の専門家の参加によって開催した。このワークショップに基づいて、英文で書かれた「New Approaches to Food-Safety Economics」(本書)が刊行された。
(以下、略)
2007年1月 オランダ/ワーヘニンゲンにて
ルード・ヒュルネ
〈主要目次〉
序論 本書刊行の経緯と分析方法論
序章 食品安全経済学への新しいアプローチ
第1編 世界と日本の食品安全問題
第1章 日本の食品リスク分析システムの実態
第1節 日本における米国産輸入牛肉のリスク分析
第2節 米国のBSE対策とリスク分析
第3節 貿易国協働リスク分析システムの開発課題
第2章 EUにおける食品安全の規制
第3章 国際貿易における食品安全の透明性
第1節 WTOと食品安全問題
第2節 世界銀行による食品安全への取り組み
第2編 リスク分析の経済学
第4章 フードシステムのリスク分析
第1節 リスク分析とHACCP
第2節 食品由来病原菌の定量的リスク分析
第3節 HACCPの経済学
第5章 トレーサビリティシステム
第1節 畜産チェーンのトレーサビリティシステム
第2節 品質管理とトレーサビリティ
第6章 リスクコミュニケーション
第1節 消費者とコミュニケーション
第2節 企業責任とリスクコミュニケーション
第3編 分析手法
第7章 食品安全規則の実験モデルと定量手法