英国の農業動物福祉団体、Compassion In World Farming(CIWF)から国際開発担当のジャニス・コックスさんによる、英国、EUにおける動物福祉政策とWTO対策等についてのゲスト講演。WTO農業貿易ルールに対抗する市民サポート農業システムの開発の方向性をさぐる。
座長: 蔦谷栄一(農林中金総合研究所)
「イギリス、EUにおける動物福祉政策 」
いま日本のみならず世界の市民は、数年来のBSE(牛海綿状脳症)牛肉による食の安全性危機に直面したばかりでなく、さらに鳥インフルエンザ、SARSなどの人獣共通感染病の恐怖にさらされています。
とくにわが国では、アメリカからの牛肉輸入の禁止に加えて、アジア諸国からの鶏肉輸入もストップし、外食産業のメニューから肉料理が消えようとしています。まさに輸入に依存する農産食品の供給体制の脆弱性があらわれたものといえます。
ほんの40年前までは日本の農産食品の自給率は、供給熱量自給率でも穀物自給率でも80%前後を維持していたのです。それが今では40%と27%までに下がり続け、先進国の中でももっとも低い水準になっています。
このような事態となったのは、日本が過去半世紀にわたって、GATT(関税と貿易に関する一般協定)とWTO(世界貿易機構)の農産食品の貿易自由化ルールに従属してきたことに他なりません。われわれは、農産物の世界市場拡大をめざす多国籍穀物メジャー企業とその代弁者であるアメリカ等の輸出国政府による貿易自由化ルールは、世界の多くの市民が望むシステムではないことを、自らの行動によって示そうと思います。
本来の農業は工業のように「モノを造る」のではなく、「生物を育てる」産業であることを再確認する必要があります。生物を育てることとは、家畜の健康と福祉を実現することであり、農村地域の多様な生物と共生する農法を行うことです。しかし、この数十年間で家畜と作物土壌を機械施設のようにみなし、ケージやウィンドレス畜舎による集約的飼育や農薬・化学肥料の大量投入が行われ、農業の本質が失われてきました。
その失われた、動物にやさしく、生物多様性を保全する農業を復活させるとともに、新しい社会のニーズに応える農業の育成を目的として、いま世界の市民はあらたな連携をつくり行動を始めています。
そのNGOの市民行動はWTO農業交渉にも影響を与えつつあり、EUは非貿易的関心事項として「家畜福祉補助金」政策を「農業農村の多面的機能」とともに強く提案しています。
このシンポジュームは、イギリスに本部をおくCompassion in World Farmingのジャニス・コックスさんをお招きし、NGOによるEUの農業政策への関わりなどをお話いただくとともに、日本の食と農と自然保護、動物福祉にかかわる農業者、食品産業者、消費者、NGO市民関係者などが集い、いかにWTOを超える力を築いていくかを検討します。さらに、その成果を提言として広く世界に表明し、NGO市民による21世紀の新しいパートナーシップ事業の創造に寄与するために、皆様の積極的なご参加を呼びかける次第です。
農業と動物福祉の研究会 JFAWI
Japan Farm Animal Welfare Initiative
代表世話人 松木洋一
<関連集会>
■シンポジウム「ファームアニマル・ウェルフェア」
・2004年3月21日(日)午後
・東京大学農学部弥生講堂