今週(2005.12)香港でWTOの世界貿易自由化交渉が行われる。ここにおいて、全世界の無数の畜産動物についての基本的な福祉の問題が軽視されるべきではない。人と動物の双方の問題が第一に考慮されるように、世界的な動物福祉グループは主張している。
このほど、WSPA, RSPCA、Eurogroup for Animal Welfareは、「Animals and People First,」という新しいレポートを発表し、畜産動物のよりよい福祉は、人や貿易、開発途上国にも利益をもたらすことを提示した。また、世界貿易協定が各国の基本的な動物福祉基準の存続を認めなければ、今回のWTO交渉は、畜産動物のケアを脅かすだろうと警告している。
ユーログループの委員長でWSPAの代表であるピーター・ディビス氏は、「農業は世界のどの国でも極めて重要な問題だ。多くの開発途上国では、工場制畜産が行われ、動物の健康や長期の持続性に害をもたらしている。EUは、環境や動物福祉のような『非貿易的関心事項』がWTO交渉で考慮されるべきだと主張してきた」と述べている。
このレポートはこう主張する。「ますます増大する畜産動物の飼育の拡大は、WTOの合意のもとで補助金が止まる場合、開発途上国での雇用や環境問題を後退させることに踏み出すだろう。集約畜産システムはわずかな人々には利益をもたらすが、かえって大きな汚染の問題を引き起こす。」
RSPCAの対外部門長David Bowlesはこう付言する。「EUは、採卵鶏や肉用ひな鳥の福祉についての方針を考慮すると同時に、畜産動物の基本的福祉問題が、貿易自由化の動きの中で不適切なものとして扱われないようにするべきだ。よりよい動物福祉基準は財政的なコスト高につながる。WTOはその事を認識し、各国が畜産動物基準を設ける事を認めるべきである。我々はすでに、今年6月に初めて実施された畜産動物に関するヨーロッパの世論調査により、大多数のヨーロッパの消費者は畜産動物の基準の向上継続を望んでいることを知っている。多くの発展途上国は、広大な土地と比較的安い労働力を有しており、このことで農業貿易における競争の有利な立場にある。特に、途上国が発展国の価値の高い有機農法と福祉の市場を目標とする場合は、貿易交渉はそうした能力を確立するような支援となるべきである」
同レポートは、途上国での集約畜産の確立は、おおむね食品の安全性を提供しないばかりか、失業者も増やすと述べている。途上国が生産する肉は、貧しい人々にとって高価過ぎ、巨大な農場はしばしば職業構造(job structure)と農業基盤社会の社会的安定性をこわす。ブラジルでは、家禽産業の強化は数千の小さな家族経営の農場を廃業へ追いやった。対照的にナミビアでは、Farm Assured Namibian Meat Scheme が肉のヨーロッパでの市場を確保している。人工ホルモンを使用せず、よりよい動物福祉によるものだ。
このレポートについて、先導的な畜産動物福祉団体であるCompassion in World Farming のチーフ・エグゼクティブ、Philip Lymberyは、「このレポートは畜産動物へのよりよい福祉を確保する事は、人間にとっても良いという事の有力なケースである。動物福祉を重んずることは動物へ優しいだけではなく、途上国へよりよい貿易の機会を提供する」
※パネル・ディスカッション:
More than trade: どのように非貿易的関心事項を調整するか?が12月14日香港で催される。司会はCaroline Lucas MEP。話者はDeveloping Country mission, the European Commission, Birdlife International, Germanwatch およびWSPAの代表を含む。